動画技術研究所

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盛んな自分史ビジネス

自費出版共同出版の罠

「自分史を書いてみたいなあ」

そういう人が増えています。

この本を手に取ったあなたも、少なからず、自分史を書くことに興味があるはずです。

 

「でも、原稿用紙で何枚くらい書けばいいんだろう?書いた後、どうやって形にすればいいんだろう?」

と分からないことだらけかもしれません。

 

そんな時、新聞広告などで、

「自分史を書いてみませんか?」

「プロの編集者が完全サポート」

というような、出版社から共同出版の案内を目にすることになります。

 

共同出版というのは、作家と出版社が共同で負担をして書籍を出版することです。

本来、書籍は

・作家に原稿料を支払って原稿を書いてもらう

・出版社が負担して書籍を出版する

・書籍の売上の一部を印税として作家に支払う

という流れで作られるものです。

 

しかし、プロの作家も本が売れない時代、当然ながらアマチュア作家が執筆した原稿は全く売れる見込みがありません。

ですから、このように作家にお金を払って書籍を出版するという商売は成り立ちません。

 

ところが、書籍には大変、魅力を感じるものです。

「自分の書籍を作る」というのはアマチュア作家の夢ですし、「自分史」のように記念になるものを出版したい、という需要が少なからず存在します。

そこで、作家自身が出版費用を負担する、「自費出版」や、出版社との共同負担の「共同出版」という形で書籍を作るサービスを、出版社は提案してくるわけです。

 

実は私も、ある出版社から、熱心に共同出版を勧められたことがあります。

 

その出版社が主催する小説のコンテストに出品後、「今回は惜しくも受賞に至りませんでしたが、共同出版という形で書籍を作りませんか?」というものです。

 

実はこれは、「賞ビジネス」と呼ばれる商売です。

一応は、新人作家発掘も兼ねてはいますが、自費出版共同出版というサービスを購入するアマチュア作家を探すのが目的なんです。

 

「プロの編集者が担当について、作品の完成まで面倒を見ますよ」

「実際に書店に本が並ぶので、ベストセラーになる可能性もゼロではありません」

「出版社も売れないと商売になりませんから、出来る限り販売にご協力します」

こういう説明をされると、心が動かされる人も何%かはいるはずです。

 

実際は、スペースが限られた棚に、まず売れる見込みのない本を置いてくれるような、余裕のある書店はほとんどありません。

1冊も本が売れなかったとしても、出版社は、作家が支払った出版費用で儲けが出るのが、この商売の実態です。

 

私の知り合いにも、「自分史を書いてみたいけれども、そもそも書き方が分からない」という方がいました。仮にAさんとしておきます。

そこで、その方は、新聞広告に出ていた、ある出版社の「自分史共同出版」のサービスを購入することにしたのです。

出版社に従えば間違いないという勘違い

出版社の「共同出版」。

大抵は数十万円から百数十万円で販売されているサービスです。

あなたがこのサービスを購入すれば、まず確実に書籍を出版することは出来ます。

しかも、出版社では全国の書店で流通させるために必要な、ISBNコードを取得するので、形としては、プロの作家と肩を並べたと言えないこともありません。

 

しかし、原稿を執筆するのはあなた自身です。

いくら、担当編集者が付いてくれているとは言え、その編集者があなたに注げるエネルギーは僅かなものです。

その人の人件費を考えてみれば分かることです。

色々とアドバイスはあるかもしれませんが、出版社は、できるだけ早く、一定の分量の原稿を用意させることに注力します。

原稿が少ないと、書籍として成り立たないからです。

 

「自分史共同出版」のサービスを購入したAさんは、3ヶ月ほど掛かって原稿を書き上げ、念願の自分史を出版しました。

原稿の分量は少ないものの、立派な装丁の単行本です。

 

元々は、自分の手元に1冊、家族や親類、友人などに配る分を作りたかったのですが、話を聞くと、印刷数を多くすると、1冊あたりの印刷代がかなり割安になると言われました。

Aさんは、「書いた自分史を売って儲けを出そう」などと思っていませんでしたが、「せっかくISBNコードを取得したのだから、販売も視野に入れてはどうか」と提案され、結局、勧められるまま1000冊作りました。

 

その本が、約束通り、全国の書店に並んだことがあるのかどうかは分かりません。

はっきりしているのは、出版社が保管期間の満了とともに、送ってきた在庫が1000冊あったということです。

現在、Aさんの自宅の一室は、1000冊の自分史の置き場として塞がっているそうです。

出版社に頼らなくても、もっと魅力的な自分史は安く作れる

私はAさんの話を聞いて、憤りを覚えました。

「自分の本を出版したい」という憧れにつけこんだ、ひどい商売だと思ったからです。

実際、自費出版共同出版サービスは、一時期、話題になって、「悪徳商法の広告を新聞に載せて良いのか?」と大手新聞社に質問状を出す被害者団体も現れた程です。

 

実際には、この商売は非合法なものではありません。あくまでも説明を聞いた作者本人が決断した結果なので、責任は作者にあるということなのでしょう。

もちろん、自費出版共同出版で自分史を出版して、「良い記念になった」と喜んでいる人もいるかもしれません。

 

しかし、私は、出版社のサービスに頼ることなく、もっと読み応えのある、楽しく読める自分史の原稿を、はるかに低コストで作れると思っています。

街の印刷屋さんに依頼すれば、立派な装丁の単行本にも仕上げてくれます。

 

別途手続きをしてISBNコードを取得しないと、書店で販売することは出来ませんが、そもそも自分史は、見ず知らずの第三者に売ることを目的としていないはずです。

それに、書店で売れないだけであって、あなたが自分でネットショップなどを使って売ったり、手売りすることは自由にできます。

実際には、自分史にISBNコードは不要でしょう。

 

昔は、「本を作りたい」という場合、出版社のノウハウや印刷所のネットワークを使う必要がありました。

しかし、現在では、出版社に頼らなくても、もっと質の高い「自分史」が作れます。

その独特の方法を、今後、紹介していきますので、お楽しみに。