動画技術研究所

趣味の映画製作、仕事の動画コンテンツ制作関連の記事を書いていきます

ビジネス動画の失敗例「おもしろCM」

今回は、「ビジネスの中で動画をどのように活用するか」というアイデアについてお話します。

ビジネスの中で「動画を使う目的」「期待されるメリット」というのは二つあります。

一つは「コストの削減」。もう一つは「それによって利益を生み出す」ということです。

 

ビジネス用の動画を作る際に、一番多い間違いは、大手の会社が作っている「テレビCM」を真似ることです。

これは、広告の話になるんですが、テレビCMのような広告というのは、「イメージ広告」の一種です。

イメージ広告は、その会社のイメージを植え付けるのが目的です。

例えば、コカコーラの宣伝では、天気の良い日に楽しくみんなでピクニックをしてると、そこでおいしく飲んでいるのがコカコーラ、というようなCMをよく見かけると思います。

車のCMでも同じです。

 

これは、「その会社が、これだけ活躍していますよ」とか「こういった形で皆さんの生活に浸透してますよ」というような「イメージ」を伝える広告です。

そもそも、それを見たからといって、本当にどれだけの売上効果があるかは、誰も分からないんです。

 

もちろん、コンビニに行って何か飲み物を飲もうと思った時に、テレビCMで見慣れている、「あのコカコーラ」が棚にあれば、それを買うということもあるでしょう。

 

ところが通常、無名の会社が、このイメージ広告としてのCMを真似してしまうと、何も起きないんです。

よくある失敗が、「面白動画」です。

 

企業のCMを作ってテレビで放送するとなると、非常な大金がかかりますから、今はお金をかけずに人に見せる方法としてYouTubeを使うというのが一般的です。

確かにYouTubeを使うと、多く人の目に触れさせることができる。

 

ところがですね、そこで流す広告が、「イメージ広告」だった場合はどうなるかということなんです。

 

これは、どこで「その広告の効果」を測定するか、という考え方を間違えると失敗してしまいます。

YouTubeというのは、「何回再生されたか」ということが簡単に測定できるわけです。

ですから、その再生回数によって、その動画の良し悪しを判断しようという考え方があるわけです。

 

これが大きな落とし穴です。

 

その再生をすること自体で広告収入を得ている、いわゆる「YouTuber」と呼ばれる人たちは、その再生回数が全てなわけですから、なるべく多く、その再生がされるような作りというものを研究して、それに長けているわけです。

 

ところが、例えば企業がYouTubeでCMを作って再生させようと言った場合に、その「再生回数」というものがどれだけ意味があるのかと言うと、非常に疑問なわけです。

 

例えば、機械の部品を作っているような工場がありました。

そこで従業員たちが本格的なダンスをしている、ちょっとシュールな映像、作業服を着て工場の中でダンスをしている、そういういわゆる「おもしろ動画」を作って再生回数を伸ばすという戦略をとることがありました。

 

実際に、プロのダンサーを雇うわけではなくて、その従業員がダンスをしている面白さというものがあるということで、再生数はある程度伸びます。

しかし、その再生数の分だけ、多く人に見られたということが、その企業にとってどれだけの宣伝効果があるのか、というところが非常に疑問なわけです。

 

例えば精密なネジを作っている工場だとします。

そこで「おもしろ動画」を作って知名度を上げたとして、「まあ、とりあえず名前が売れたからいいじゃないか」というところで納得するんだと思うんですけれども、現実問題として、そのネジを発注する側としては、「おもしろ動画を作っている会社だから信用できる」ということには全くならないわけです。

 

「まあ大金をかけて、こんな遊び心があるCMを作っているくらいだから、経営的には安定しているんだろう」というような判断にはなりますけれども、「この従業員達に任せれば、安定した品質のネジが納品されるはずだ」というような根拠には全くならないわけです。

 

顧客が求めている情報というのが何も入っていないCMを作って、再生回数だけ伸びることになる。

その動画を面白がって見る人というのは、「ネジが欲しい人」ではなくて、こういう工場の従業員がダンスをしている「面白い動画を見て楽しむだけ」なんですね。

 

これは、せっかくお金をかけてCMを作っても、求める効果が出ない典型例だという風に思います。

残念ながら「企業で動画を作る」と言った場合に、こういう失敗をすることが非常に多い。

 

それは、発信する側が「広告としてのCM」について、あまりにも知識がないということもあります。

動画を作る側は、制作費が発生して、それが収入になるわけですから、「こういう動画を作ったらどうですか?面白いですよ」という風に案内するんだと思います。

 

しかし、現実的には、その広告は企業にとって有効に機能しないので、その制作費は無駄になってしまいます。

 

「動画をビジネスに活用しましょう」と言うと、こういう失敗が非常に多いということに注意していただいて、「より効果的な動画の使い方」というのを検討していただければと思います。

 

具体的に効果がある事例や提案を、このブログの中でも順次、していきたいと思います。